リレーのバトン

リレーのバトン

この意味深な長さと太さに男は憧れ女はたじろぎ、完璧

なまでに無駄を排除されたフォルムは粗を探そうにもそ

の手がかりすらつかめない。走行中のまっ白な体操服を

背にして六色のバトン達は、なお一層あざやかさを増す

のだが、5位6位あたりをさまようものは心なしかその輝

きも鈍ってみえる。誰に令されたわけでもなくこのわず

か数分間は、国宝級の御もてなし。落っことしでもしよ

うもんならさあ大変。取り乱す走者と轟く罵声に事の重

大さが顕れている。ゴールテープが切られた途端、立場

は一変、ただの丸い棒へと成り下がり、放り捨てられた

バトン達は狂喜乱舞する生徒達の影で再び一つに固まっ

て、こっそり姿をくらましてゆく。