時代劇というと、義理・人情があり、戦やチャンバラがあり、言葉は現代と違って難しく堅苦しく、高齢者が好きなものと思いがちですが、笑いもあるコメディーの時代劇なら世代を問わず楽しめるのではないでしょうか。
2016年に公開された「殿、利息でござる!」は、明るく笑いもある子供も見やすい時代劇ではないかと思います。
テーマはタイトルの通り、お金についてですが、「お金の使い方」を考える内容なので、真面目でありながら堅苦しくない映画です。
その中身を見ていきましょう。
1.『殿、利息でござる!』あらすじ
舞台は1766年の仙台藩の宿場町・吉岡宿。
藩は金欠で、直轄領ではない吉岡宿の百姓や町人へ容赦なく重税を課していた。
そのため町は困窮し破産者や夜逃げ者が相次いでいたが、町の将来を案じる十三郎は、篤平治と宿場復興の策を練る。
その策とは、有志で銭を出し合って藩に大金を貸し付け、利息を取るというものだった。
途中でバレたら打ち首になるかもしれない前代未聞の計画だが、十三郎は同志と銭集めをこっそり進めていくのであった。
吉岡宿では計画に賛同する者も多かったため、大ごとにならないように“つつしみの掟”を定めた。
様々な問題が直面するも、千両(現在の価格で3億円)もの大金を集められるのだろうか?
果たして、町のためのこの計画はうまくいくのか――?
2.『殿、利息でござる!』感想・評価
出演者の面々は豪華なだけではなく、演技も芝居がかっておらず、内容に入り込める映画でした。
阿部サダヲや瑛太、妻夫木聡などのメインになる役はもちろんですが、西村まさ彦や羽生結弦、浜田岳も存在感のあるいい雰囲気を出しています。
感情の起伏が激しく、利息を取る秘策を打ち出す篤平治を演じた瑛太は、主演の阿部サダヲよりも目立つぐらい熱い役どころでした。
西村まさ彦のイヤミな小さい男感も、浜田岳のゆるいナレーションもハマりました。
意外と羽生結弦の殿様役も良く、棒読みな感じもなく堂々とした演技でした。
誰が殿様役なのか出演陣には知らされていなかったそうで、サプライズのまま本番の撮影が始まったようです。
殿様の登場シーンでは役者たちの本物のリアクションが見れるので、注目したいところです。
ストーリーとしては、実話を元にしていることもあるが、意外なところで困難が訪れたりして面白かったと思います。
町人たちは意外と乗り気になって銭集めに賛同するが、それが自分の私利私欲のためだったり。
そのために定められた“つつしみの掟”には、「ケンカをしないこと、計画を口外しないこと、寄付には匿名であること」などがあるが、「道を歩く際もつつしむ」「飲み会の席でも上座に座らずつつしむ」という項目には、計画には正直あまり関係ないところが少し笑いを誘っています。
3.『殿、利息でござる!』ロケ地について
撮影は、スタジオセディック庄内オープンセットで吉野宿の町人たちのシーンを撮っています。
仙台藩の撮影では、長野県や新潟県でもロケ撮影が行われていたそうです。
特に長野県の松代エリアでの撮影が多く、ファン向けにロケ地ツアーもあったようです。
石巻市の茶畑ものどかで行ってみたいですね。
4.『殿、利息でござる!』原作について
本作は、「武士の家計簿」の作者でもある磯田道史の「無私の日本人」が原作となっています。
磯田道史は、映画の「武士の家計簿」が公開され話題になったときにもらった手紙をきっかけに、吉岡宿を救う町人たちを記録した「国恩記」という古文書に出会ったそうです。
この古文書の著者である龍泉院の和尚、栄州端芝は、映画にも出てきています。
十三郎は、計画が成就してから4年後に亡くなったそうですが、彼は「私のしたことを語らず、これからも吉岡の町に助力し、茶を売れ」という言葉を残したそうです。
彼らしい“つつしみ”を子孫たちは家訓にして、現在も「穀田屋」は営業しているそうです。
5.『殿、利息でござる!』まとめ
時代劇ながらに庶民にスポットライトを当てた話が、こんなに引き込まれるとは思いませんでした。
コメディー色の強い映画かと思いきや、自分の財産を投げうって奔走する十三郎や、悪評のあった先代・甚内が町のために動いていたり、役人もそれを聞いて動きだしたり、感動できる作品でした。
なによりも、「搾取される側が搾取する側へ」との大胆な発想の転換は、現代にも通じるものがあると感じました。
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