今回は、2017年に公開されたアニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』について紹介します。
この映画は93年にテレビドラマ化、95年には映画が実写で公開されています。
実写ドラマ・映画の監督はあの岩井俊二監督でした。
岩井俊二監督は『リリイ・シュシュのすべて』で数々の賞を受賞されましたが、実は日本映画監督協会新人賞を獲ったのはこの実写映画版『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』なのです。
ちなみに岩井俊二さんは、このアニメ版の制作の打ち合わせにも参加されています。
また、この映画は今飛ぶ鳥を落とす勢いの人気歌手・米津玄師さんが主題歌を担当された上に、主人公2人の声優は 菅田将暉 さんと広瀬すずさんが担当して、普段アニメにあまり興味がないという方でも興味を持ってしまう様な作品作りがされていたように思います。
監督もあの大人気アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の新房昭之さんで制作会社は『魔法少女まどか☆マギカ』や『化物語』と同じシャフトが担当していて、アニメ好きの方もかなり惹かれる様な制作陣が組まれていました。
海外の反応は?
出典:日本テレビ
日本のアニメは、今や世界中にファンがいるくらい有名で影響力が大きく、日本のアニメを見て日本語を勉強した方や、日本に興味を持って訪れてくださった方が多くいるくらいです。
なので、日本のアニメ映画の多くが海外でも公開され世界で楽しまれています。そのため海外の映画批評サイトなどでも多くの日本映画のタイトルを見ることができます。
例えばアメリカの大手映画批評サイト”Rotten Tomato”に2016年に公開された『君の名は。』も載っているのですが、こちらはなんとTomatometer(トマトメーター) 98%と非常に高評価です。
Rotten Tomatoとは?
このサイトの名前は日本語に直訳すると「腐ったトマト」です。
面白くない映画に対して怒った観客が、腐ったトマトや野菜を投げつけることに由来しているのですが、
Tomatometerが60%以上の場合はフレッシュ(新鮮)な映画
Tomatometerが60%未満の場合はロッテン(腐ってる)な映画
とされます。
しかも75%以上の評価が付くと「新鮮保障」というサイト内評価が付されます。(レビューに信憑性がないとつきません。)
ちなみにこのTomatometerは二つのスコアで形成され、評論家の評価により付されるものと、観客が見てつけた評価を元に付される「オーディエンススコア」があります。
そうなると『君の名は。』はかなり”Fresh”な映画と言えますね!!
他にも、日本のアニメ映画で新鮮保障がついている映画は『千と千尋の神隠し』とかですね。Tomatometer 97%という高評価で、やはり日本国内でも評価が高い映画はRotten Tomatoでも高い傾向にあります。
では肝心の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の評価はどうなんでしょうか。
次項で詳しく見ていきます。
Rotten Tomatoから見る『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の海外の評価
結論から申し上げると、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の評価は低いです。
先程60%未満は腐った映画とされてしまうと述べましたが、なんと『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』はTomatometer 43%!!
ちなみにオーディエンススコアの方は61%で、批評家の感想ほど悪くはありませんが、やはり良いものとはいえません。
ちなみに”IMDb”という日本でいう”GYAO!”に似たアニメやドラマを配信するサイトがあるのですが、そこでもやはり10段階中5.5というあまり高いとは言えない評価になっています。
度々引き合いに出して申し訳ありませんが、”IMDb”内での『君の名は。』の評価は8.4、『千と千尋の神隠し』の評価は8.6となっております。
では、海外の大手サイトでこういった評価だからといって、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は本当につまらないと言えるのでしょうか?
批評家の良い評価と悪い評価についてのまとめ
まずは良い評価をした批評家の意見をいくつか箇条書きでまとめてみると、
- 若い恋人同士のロマンスに感動させられる。
- 物語が複雑に入り組んでいて、理解するのが難しいがそれこそが面白い。
- 映像が美しい。
等が多い意見となっておりました。
やはり日本のアニメ映画の映像美に関する評価は海外でも高いようですね。
また今作は、劇中で何度もタイムリープし、if(もしも)を繰り返す物語なので、今どの時間の話なのか混乱させられることがあります。
しかし、それこそが美しい物語を作り出していて面白いと評価してくれている批評家の方たちもいました。
では、反対に悪い批評の内容はどうでしょうか。こちらも簡単に箇条書きにまとめてみます。
- 映像は美しいが物語が複雑で見てて疲れる。
- 男性視点が強すぎて女性差別的な内容が含まれている。
- 絵は綺麗なのに設定を持て余している。
という様なことが書かれていました。
Rottenの評価でも絵の美しさはやはり評価されていましたが、Freshの方で高評価となった物語の複雑さが評価をむしろ下げてしまったと言える印象になりました。
また主人公の少女・なずなの描かれ方が、男性目線の性の対象としての女性として描かれすぎていると評価されていて、この評価に関してはYahoo!ニュースの記事にも書かれてしまいました。
昨今#Metooなど男女平等についてより多くの人が考える時代となりました。
そのため、なずなのキャラクター設定が時代に合わなかったのかもしれません。
観客の評価
では、今度は観客の評価はいかがでしょうか。
残念ながらRotten Tomatoでは観客でレビューを書いてくれている方が1件もなかったので、IMDbのレビュー意見を参考にさせて頂きます。
- 絵が綺麗すぎるのに対して、物語が退屈。
- 『君の名は。』や『時をかける少女』により、映画への期待が大きすぎた。
- 話が複雑すぎて、大切なシーンを見逃したのではないかと思った。
等でした。
日本のアニメ映画はやはり世界でも期待値が高いので、その分少しでも裏切られてしまうとがっかり感が強いのかもしれません。
また、やはり先程のRotten評価と同じく話が複雑なことが敗因になっているみたいですね。
海外の反応を見て思うこと
出典:アニメ!アニメ!
私は劇場まで足を運んでこの映画を見ましたが、決してここまで評価が低くなるような映画ではないと思っております。
では海外で評価が上がらなかった理由は何か。私なりに考えてみました。
海外で見られてる数が圧倒的に少ない
1点目に『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は他の海外で高評価されている映画に比べて公開された国がそもそも少ないです。
日本では全国でも多くの映画館で公開されました。
しかし、公開された国は台湾、香港、中国の3カ国とアメリカだけです。
しかもアメリカはL.A.だけの限定公開で、見てる母体数が『君の名は。』や『千と千尋の神隠し』より圧倒的に少ないといえます。
『君の名は。』は、先に挙げた4カ国以外にもイギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど世界135カ国で上映されました。
国連加盟国は192カ国になるので実に世界の7割の国で公開されたことになります。
『千と千尋の神隠し』も当時にしては異例の世界約50カ国で公開され、世界中の多くの人から支持を得ました。
それを証拠にRotten Tomatoは口コミ数も見れるのですが、Rotten Tomatoの『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』のレビュー数は観客・批評家あわせて486件。
対して『君の名は。』は12,377件、『千と千尋の神隠し』に至っては336,980件となっております。
これだけでかなりハンデを感じますよね。
キャラクター像が前時代的だった
キャラクター像が時代に合っていなかったとも言えます。
ジェンダーに厳しい今の世の中においてなずなは前時代的な自分一人では何も出来ないか弱い女の子というキャラクターになっています。
日本でも近年#Metooは話題になっていましたが、このハッシュタグが日本で流行ったのは2018年くらいからです。
そう考えると#Metoo発祥の国であるアメリカやジェンダー論に関してアンテナの高い諸外国では受け入れられ難い内容になってしまっているのかもしれません。
アニメーション技術の高さに対する評価
ネガティブな内容だけではありません。
やはり映像に関してはどんなに悪い評価を下しているレビューでも美しいと評価してくれている感想が圧倒的でした。
今回の記事を作成するにあたり驚いたことは、海外にも日本の声優さんのファンがいるということです。
また複雑に描かれた物語も、美しい映像とキャラクターの細かい表情の動きで表現されている、ということを評価してくれている方もいました。
ただ、海外では基本的にアニメは子供が見るものとされているので、複雑な物語を良しとしない方の方が多いです。
でも、『君の名は。』はミスリードを誘う作品だったわりに高評価でした。
なので複雑な物語が一概に低評価になるわけではないようですから、やはり観客数の少なさが直接的な要因ではないかと推測します。
日本のアニメ技術を海外の方が評価してくれると嬉しいですよね。
だからこそ『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』もより多くの人に見てもらいたいと思います。
まとめ
海外での評価はイマイチだった要因は、観客数の少なさと時流に合っていなかったこと、そして複雑に仕組まれた話のせいだと思われます。
ただ、この作品自体は海外でも評価されていたように美しい映像と美しい音楽で構成されており、それだけでも見る価値が大いにあるのではないかと思います。
まだ見たことのない方は是非一度見てみてください。
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