世界中の映画ファンの頭をかき乱している現在公開中の映画「TENET」
監督のクリストファー・ノーランの初期作で同じく難解とされたのが今回ご紹介する「メメント」
記憶障害の主人公の体験を編集という「時間操作」によって観客に追体験させるサスペンス映画です。
落ち着いて整理すれば何てことのない話ですが、映画に身を任していると迷子になることもしばしばあります。
ここでは映画の要素を整理しながら、レナードが物語のラスト(映画の冒頭)でテディを殺害した理由について考察していきます。
・「復讐する自分」を成り立たせるためにテディは殺された
・テディを殺すのは利用され続ける主人公の世界への反撃でもある
・メメントのキャスト情報
メメント|テディはなぜ殺された?
利用され振り回される主人公
本映画で主人公レナードは前向性健忘という記憶障害を患っています。彼の奥さんがレイプされて殺害された日から、彼は10分間しか記憶を保てないのです。
物語の中で、人々は記憶を保てないことを良いことに、レナードを利用します。
モーテルの受付の男はレナードに2つの部屋を貸し出しており、お金を巻き上げようとしていました。ナタリーは自分にとって不都合なドッドを殺害するように仕向けました。そして、テディはジミーを殺させてお金儲けしようとしていました。
レナードは悲しいことに、記憶障害のせいで自分が利用されていることに気づこうが気づくまいが、忘れてしまいます。
本映画はほとんど彼が利用されて振り回されるのを追体験する映画と言ってもいいでしょう。
サミーというもう1人の「主人公」
レナードは記憶障害になる前は、保険の調査員をしていました。
そこで、後の自分と同じような症状を患うサミー・ジャンキスと出会います。
レナードによれば、サミーの記憶障害が治ることを信じた奥さんはある賭けにでます。それは、自身の糖尿病の治療用インスリン注射をサミーにお願いするが、時間をおいてからもう一度お願いしたらどうなるか?というものでした。
サミーは結果的に、インスリン注射を何度も奥さんに打ち、彼女はそのまま亡くなってしまいます。
ですが、映画のラストで、このサミーの物語が実はレナードの話であることが明らかになります。つまり、事件を生き延びていた奥さんを殺していたのは「ジョン・G」ではなくレナード自身だったのです。
明言はされていませんが、レナードは自身の罪の物語の主人公をサミーに置き換えて人に語ることで、許しを乞おうとしていていたのではないでしょうか?
彼にとって物語は自分のために存在するのです。それが、事実であるかどうかはあまり関係ないのです。
自分の物語を紡ぐ者は誰か?
サミーの話と同時にもう一つ判明すること、それは既にレナードは「ジョン・G」を殺していたことです。そして、新たな「ジョン・G」を求めるべく証拠の一部を捨てたのもレナード自身でした(テディの誘導説もあるが、今回は割愛する)。
これは、「ジョン・G」を殺すという自分の物語を自分で作り上げていたのです。そこには、目を閉じた時に思い浮かぶ奥さんとの綺麗な思い出、つまり「愛」が根底にあります。でも、一番の目的は「亡き妻の復讐を果たそうとする自分」という存在意義を保つためだと考えられます。
そして彼はテディを「ジョン・G」として殺すよう新たな証拠を作り上げていきます。当然、そのことは未来の自分は忘れますが、「ジョン・G」を殺すという大きな物語が出来上がるのです。
テディを殺した理由とは、「自分という主人公を成り立たせるため」だと考えられます。そして、これ以上彼に利用されないためです。
レナードは利用されているようで、実は大きな意味で周りを利用して自分の物語を紡いでいたのです。
メメント|キャスト紹介!
ガイ・ピアース/レナード
記憶障害でまわりに翻弄される本作の主人公を好演する。ハンサムな顔立ちと英国人らしい喋り方が特徴の俳優。数多くの映画に出演し、代表作に「L.A.コンフィデンシャル」「アイアンマン3」などが挙げられます。最近では歌手としても活躍されています。
キャリー=アン・モス/ナタリー
物語の中で最もいろんな表情を見せるナタリー役を演じる。彼女といえば、やはり「マトリック三部作」のヒロインであるトリニティを演じたことで有名です。現在「マトリックス4(仮)」が製作中であり、彼女も参加しているとのことでマトリックスファンは要チェックです。
ジョー・パントリアーノ/テディ
レナードの理解者のようで、実は主人公を利用していた刑事役を演じる。数多くの映画に出演し、「バッドボーイズシリーズ」のハワード警部役として有名です。
ジョージャ・フォックス/レナードの妻
回想シーンで何度か出てくるレナードの奥さん役を演じる。テレビドラマでの活躍が多く、「CSI:科学捜査班」では長期に渡ってサラ役を好演されていたことで有名です。
メメント|映画のラストテディはなぜ殺された?キャスト紹介も!のまとめ
いかがでしたでしょうか?
自分の人生の主役はやはり「自分」であり続けたい。周りの人々に翻弄されているようで、実は主人公自身が物語の結末を導いていた、と分かるラストには思わずスカッとさせられます。
そして、彼は目を閉じて、妻との思い出が確か目ます。それが定かな「記録」ではなく、彼にとって自分を確かめる「記憶」であることを確かめるのです。客観的に見れば、もの悲しいラストですが、彼にとってはそれは救いであるのです。
We all need mirrors to remind ourselves who we are.
記憶は自分の確認のためにあるんだ。
– レナード(映画「メメント」より)
最後までお読み頂きありがとうございました。
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