アカデミー賞作品賞受賞「パラサイト」の後半は、ショッキングなシーンが出てきます。
お金持ちのパク一家で一人息子ダソンの誕生パーティが開催されている最中、事件が発生!
パク一家の運転手として働いていたギテクは、パク一家の大黒柱ドンイクを刺してしまいました。
ギテクがドンイクを刺した理由については、ハッキリしません。
ではなぜ、ギテクはドンイクを刺してしまったのでしょうか?
考察してみました。
- 映画「パラサイト 半地下の家族」でギテクがドンイクを刺した理由
- 映画「パラサイト 半地下の家族」で取り上げられた臭いの意味
父親ギテクはなぜ刺したのか?

出典:imdb
ギテクは、暴力的な性格とは無縁の優しく温和な性格です。
人に危害を加える人物ではありません。
またドンイクに対しても嫌な印象は受けておらず、とても立派な人だと大絶賛していました。
ではなぜギテクは、ドンイクを刺してしまったのでしょうか?
ギテクの本当の性格、ギテクがドンイクを刺した状況から考えてみましょう。
ギテクの性格は?
先ほども述べたように、ギテクは温和な人物で一歩後ろに下がって物事を見守る性格です。
妻や子供達が表立って騒いでも、ギテクだけは1人後ろに下がって様子を伺っていました。
一方で、切れると何をしでかすかわからないという一面も持っています。
ドンイクは、ギテクの性格を見抜いていました。
「言葉や行動が度を超す瀬戸際に立っているけど、絶対に一線を超すことはない」と。
ドンイクがギテクの性格を見破ったのは、車の中での出来事です。
ギテクがドンイクを乗せて運転している中、目の前にトラックが飛び出ました。
するとギテクは暴言を一言。
優しい人ほど激怒した時に何をしでかすかわからないものです。
ドンイクを刺す前から既にスイッチは入っていた?
ギテクがドンイクを刺したのは突発的なものですが、刺す前から怪しい雰囲気はありました。
パク一家でパーティが開催される前日に大雨が降り、キム一家は住む場所を失います。
住む場所を失っている状態にも関わらず、パク一家はパーティのためにキム一家を招集。
パク一家の妻であるヨギョンは、パーティの準備を笑顔で進めます。
ヨギョンは「昨日の大雨のお陰で良い天気になった」と心無い発言をし、ギテクのイライラをさらに増大させました。
決定打
ギテクが一線を越えてしまった原因は、ドンイクの行動そのものにありました。
パーティの最中に、パク一家の家にある地下室に潜んでいたグンセが乱入。
グンセはギテクの娘であるギジョンを刺殺!
ギテクの妻であるチュンスクは、グンセと格闘!
下手をすれば、チュンスクの命も危うい状況です。
しかし、ドンイクはギジョンやチュンスクを助けようともしません。
命の別状がなく、失神しているだけのダソンを優先的に助けようとしていたのです。
そんなドンイクの行動にギテクは大爆発。
ドンイクの胸に包丁を突き刺したのでした。
臭いから考察

出典:namu.wiki
ドンイクの行動が許せないとしたら、もっと早い段階でギテクは行動に出たはずです。
しかし実際はグンセが倒れしばらくして後に、行動に出ました。
ギテクが行動に出る直前、ドンイクが取った行動は鼻をつまみ、地面に落ちた鍵を拾ったことです。
映画「パラサイト」を語る上で、「臭い」は重要なキーワードになります。
映画に描かれた「臭い」を探ると、ギテクが刺した本当の理由が見えてきました。
臭いの正体は?
臭いの正体について、ギジョンは「半地下の臭い」と推測します。
ダソンは、パク一家に転がり込んだキム一家をさして「臭いがする」と指摘。
臭いについては、ドンイクも薄々気が付いていた節があります。
キム一家が暮らす半地下は、読んで字のごとく、部屋の半分が地下に埋まっています。
太陽が当たることはなく、ジメジメした環境です。
映画の登場人物達の服装から察するに、時期的には春の終わり頃~夏の初め頃でしょう。
映画のシーンだけの判断になりますが、半地下の家にエアコンは見当たりません。
かなりジメジメした環境のため、カビ臭さが漂っていたのでしょう。
半地下は下流層の象徴
半地下独特のカビ臭さは、下流層を象徴したものでしょう。
根拠は、ギジョンの「(臭いは)半地下の臭いよ。ここを出れば消える」のセリフです。
お風呂で使う石鹸を変えても、洗剤を変えても、半地下を出ない限り臭いが取れることはありません。
韓国は、世界屈指の超格差社会です。
一度出世コースを外れると元に戻るのはほぼ不可能です。
半地下はまだ良い方で、酷い所になるとバラック小屋に住んでいる人も実際にいらっしゃいます。
一度半地下の臭いが染みついた者は、どんなに実力があってもセレブになるのは不可能です。
仕方なく身に着いてしまった臭い
キム一家についた臭いは、キム一家自ら希望してつけた臭いではありません。
パク一家に”パラサイト”する前から、キム一家は半地下から抜け出そうとしていました。
しかし現実は甘いものではなく、手がけた事業は大失敗。
さらに追い打ちをかけるかのように、大雨によってキム一家は住む場所を失ってしまいました。
衛生状態がよくない避難所に身を寄せたがために、キム一家の臭いはさらに強くなります。
ドンイクは、キム一家が仕方なく身につけてしまった臭いを真っ向から拒否。
臭いを拒否したのは、一家への侮辱・下流層への差別と捉えたのでしょう。
ギテクは下流層を否定したドンイクの姿を見て一線を越え、刺してしまったと思われます。
まとめ
ギテクがドンイクの胸を突き刺したのは、下流層が持つ上流階級への怒りによるものでした。
映画「パラサイト」は韓国が舞台ですが、日本も他人事ではありません。
日本の貧困層は15.7%と、G7加盟国の中で2番目に多い割合となっています。
ギテクが刺した理由を突き詰めると、見えてきたのは抗えない格差社会の闇でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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