韓国映画『パラサイト半地下の家族』は2019年に制作され、2020年に日本でも公開されました。数々の賞を受賞したこともあり世界的に大ヒットしました。
貧富の格差社会問題がテーマで、貧困層のキム一家が富裕層のパク一家に寄生していくという物語。この映画のポスターを見るだけで嫌な予感がします。このポスターには映画を考察できる要素が至る所に散りばめられています。
今回は、『パラサイト半地下の家族』のポスターから映画の内容を紹介していきます。
- 『パラサイト半地下の家族』ポスターは誰の足?
- 『パラサイト半地下の家族』ポスターの意味
- 『パラサイト半地下の家族』ポスター韓国版と日本版の違い
ポスターは誰の足?
左下に横たわる足
ポスターには左下の方に仰向けになっているような足が見えます。女性のように思えます。この足はこの映画に起きる悲劇を表しているのです。
このポスターには登場していない人物がいます。記念撮影のように写る人々は、中心が富裕層とされるパク一家の4人、そして、まるでパラサイトを彷彿とさせるかのように、その周りを貧困層とされるキム一家の4人が写っています。ここまでで人物は8人しかいません。
ここに写らない登場人物の足だと考えれば、あの2人がいません!女の人の足なので、元家政婦のムングァンの足だと考えられます。映画の中で彼女は死んでしまうので、ポスターではこのことが表現されているようです。
そしてもう一つ、足元は富裕層のパク家は靴を履いていて、貧困層のキム家とムングァンと思われる人物は裸足でした。
左上の絵にも意味があった
このポスターに登場していない人物はあと一人います。ムングァンの夫で、気づかれることなく地下に住み続けていたグンセ。パク家の息子・ダソンが描いた絵には、右下が黒く塗りつぶされており、“ダソンの心の闇”とされていましたが、この部分は実はグンセの存在を描いていたと考えられます。
ダソンはグンセを一度だけ目にしたことがあり、このことがトラウマとなっています。つまり、この絵は地下の暗闇に潜むグンセを黒く塗りつぶすという形で表現しているようです。
結果、この家に住んでいた10人全員が写っている記念撮影のようなポスターに仕上がっています。
まるでトリックのように、このポスターの中にはいろいろな予感が散りばめられていて驚いてしまいます。
左下の山水景石にも
ダソンが描いた絵の下に目を向けると、映画の初めの方にギウが友人のミニョクにもらった、富をもたらすとされる山水景石という岩も写っています。ここにも意味があります。
無職のキム一家はパク家で働くことになるので、そういった意味ではこの岩は幸せをもたらしています。しかし、後にこの岩は狂気になります。ギウはグンセにより頭を叩かれ重傷を負うことになります。
山水景石には水を吸うと色が変わるという特徴もあり、この特徴は映画の中でも描かれています。そのシーンは大雨の日、岩が雨により水を吸ってしまいます。キム家の運命はこのことから悪い方向へ変わっていくとの意味も含まれ、このポスターに写る山水景石にも意味があります。
ポスターの目の線の意味は?
パラサイト、今の世界の課題に訴求するとても良い映画。富裕層と貧困層、彼らの潜在意識・感情及び、それが現れた結果を二項対立的に克明に描いており、また、”半地下の家族”というサブタイトル、ポスターの「幸せ 少し いただきます」、白黒目隠しなど細部まで強いメッセージが分散されてる。オススメ pic.twitter.com/k5joyolK6b
— Junichi Honda@不動産・建築テック (@JH19890813) March 8, 2020
人物全員に目隠しする意味
映画製作のクァク・シネは、ポスターの人物の目隠しには特に意味を持たないと発表しています。
このポスターのデザイナーはキム・サンマン監督で、この映画のシナリオを読んで本人の解釈からこの案を思いついたとのこと。そして、目隠しをすることでどの登場人物にも感情移入しないようにしたいという意図があった。また、映画の象徴的なイメージとインパクトを与えたいという意図はあったようです。
クァク・シネ側もキム・サンマン監督の意思を尊重し、登場人物に目隠しをしたインパクトのあるポスターが生まれたようです。
韓国と日本のポスターの違いは?
日本版のポスターは足がない
韓国版では左下に足が写っていますが、日本版では足が写っていません。また、目隠しも韓国版ではパク一家は白線、キム一家は黒線に分けていますが、日本版は全員の目隠しが白線でした。
どうしてなのでしょうか。
理由としては…
・タイトルの白い文字が目立たなくなるから?
・日本人に合わせて変えている?(考察するのが得意なためネタバレしやすい)
他国のポスターは足も写っているようなので、はっきりとした理由はわかりませんが、日本版だけの意味があると考えられます。
半地下の家族も日本版のタイトルだった
ボン・ジュノ監督は副題である”半地下の家族”も、日本版のみのタイトルだと語っています。
韓国の住居には半地下で暮らすスタイルは珍しくありませんが、日本の文化からするとなんとなく暗いイメージもします。
そして、映画の内容を全て知った時に”半地下の家族”というワードの持つ意味がリアルに深く感じられます。
まとめ
いかがでしたか。
『パラサイト半地下の家族』のポスターには映画の内容を考察できる仕掛けがたくさん写っていました。
特に目を引く左下に写る足は元家政婦のムングァンのものだと考えられます。理由は貧困層なので裸足であることと、彼女には死んでしまうという経緯があるからです。
ポスターに写る人物の目隠しには特に意味を持たないとのことでしたが、象徴的なイメージとインパクトを与えたいという意図はあったようです。
また、日本版のポスターだけに足が写っていない理由はタイトルの文字を強調したいからと日本人にはネタバレしやすいからだと考えられます。
海外のポスターもその国独自のポスターがあるようなので、そちらも調べてみると面白そうです。
映画の内容を全て知った後にポスターを見ると、また違った視点から楽しめる作品となっています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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