ファーストラヴ|映画のタイトルの意味は?原作者島本理生の意図についても

こんにちは!今回は映画「ファーストラヴ」についてご紹介します。

「ファーストラヴ」は2021年2月11日に公開された、堤幸彦監督の作品です。「ナラタージュ」や「RED」の原作者としても知られる島本理生さんの小説が原作であり、北川景子さんや中村倫也さん、芳根京子さん、窪塚洋介さんらが出演しています。

この記事で分かること
  • 「ファーストラヴ」のあらすじ
  • 「ファーストラヴ」のタイトルの意味は?
  • 原作者・島本理生が込めた意図とは?
あらすじ

女子大生が父親を刺殺した。容疑者である聖山環菜(芳根京子)は逮捕後、「動機はそちらで見つけて下さい」と挑発的な発言をし世間を騒がせる。事件を取材する公認心理士の真壁由紀(北川景子)は、夫で写真家の真壁我聞(窪塚洋介)の弟であり、環菜の弁護人でもある庵野迦葉(中村倫也)と共に環菜の真意を探る。証言を二転三転させる環菜と向き合ううちに、由紀は環菜のひた隠す心の傷に気付くが、それは同時に自身が封じ込めたはずの幼い日の忌まわしい記憶を呼び覚ましていく事になるー。

ファーストラヴのタイトルの意味とは?

では、この映画のタイトルに込められた意味は何なのでしょうか?

それはずばり、“初恋””親から子供への愛”、“初めて知った本当の愛”だと考えられます。

 偽物の”ラヴ”の悲しい記憶

まず「ファーストラヴ」は、直訳すると2通りが思いつきます。

まずは“初恋”です。原作者島本理生さんも実際に「この作品に初恋というタイトルをつけた」と話しており、見逃せないキーワードです。作品中には環菜の語る“初恋”が重要なエピソードとして登場します。それは環菜が12歳の時の大学生裕二との体験でした。環菜は高圧的な父から救ってくれる存在を裕二に求めます。しかし裕二は環菜をそんな環境から救う事はせず、肉体関係はあるという中途半端な関係を続けます。やがて環菜の父に全てがばれると、裕二は環菜の父を恐れて環菜から離れて行き、関係は終わります。これは環菜の言う様な美しい初恋ではなく、とてもなものだったのです。

もう一つが”初めての愛”です。
例えば、人生で一番初めに受け取る愛と言えば”親から子への愛”がありますね。子供は親の無条件の愛で守られて大人にならなければなりません。しかしこの作品の登場人物で、親からきちんとまともな愛をもらえていたのは、由紀の夫我聞だけです。

環菜は父から絵画モデルを強制され、父に服従していた母にも守ってもらえませんでした。
由紀は父が海外で児童買春をし、自分を見る目もおかしい事に怯えながら育ちます。
迦葉は幼い頃実の母親に捨てられ、母の愛に飢えて育ちました。

”ファーストラヴ”を”初恋””初めての愛=親から子への愛”と意味づけると、傷を伴う辛い思い出としての”ファーストラヴ”の意味がタイトルから読み取れます。

 初めて受け取る本物の”ラヴ”

しかし映画も物語が進むにつれ、登場人物は新しい”愛”に出会い、”ファーストラヴ”にも新しい意味が見えてきます。それは”初めての本物の愛”です。

環菜にとっては、自分を救おうと真剣に向き合ってくれた由紀の愛
迦葉にとっては、実の親に捨てられた自分を救って愛してくれた兄我聞や叔父叔母の愛
そして由紀にとっては、自分の心の傷や迦葉との過去に気付きながら、そっと見守り続けてくれていた夫我聞の愛がそれです。

まだ幼く未熟だった頃に経験せざるを得なかった偽物の恋や愛に傷ついたとしても、それを乗り越えた時、人は初めての本当の愛に出会う事が出来る、というこの作品の真のメッセージが見えてきます。このようにタイトル”ファーストラヴ”には、辛い記憶としてのファーストラヴと、それを乗り越えた後に知る本物のファーストラヴという二重の意味がタイトルに込められているのではないでしょうか。

原作者・島本理生の意図やメッセージは?

では、原作者の島本理生さんは、この作品にどんな思いを込めたのでしょうか?

 原作者 島本理生さんはどんな人?

原作者の島本理生さんは1983年生まれ。に松本潤さんと有村架純さん主演で映画化された「ナラタージュ」の原作者でもあります。「ファーストラヴ」では第159回直木賞を受賞しました。

 女性にだから寄り添える傷を描く

島本さんは原作を執筆するにあたり、このように語っています。

「これまでいろいろな形の恋愛小説を書いてきたのですが、次第に女性のなかには恋愛では救いきれないものがあると思うようになりました。今回、いちばん最初にあったのは、男性には理解できない女性の心理や問題を女性が救う小説を書きたいという思いでした」

作中には、環菜と自分の心の傷を重ね合わせる由紀が迦葉にむかって「本当に環菜ちゃんを救いたいと思っているのか」と声を荒げるシーンが出てきます。それは女性が男性という存在から傷付けられる事の恐ろしさを、同性として身をもって知っているからです。そしてその傷が恋愛では癒されない事も、同じ女性だからこそわかっているからです。心の傷を誰にも癒してもらえず、必死に救いを求めて愛の無い恋愛を繰り返しては傷を深める環菜。そんな環菜の本当の姿に気づいて救いの手を差し伸べたのは、同じ女性の由紀でした。

近年盛り上がりを見せるMe too運動を見ても分かるように、同性だからわかり合えるものってありますよね。これは女性小説家の島本さんだからこそ送り出せるメッセージと言えます。

 愛のように見えて、愛じゃないものに気付いた時、見えるもの

みなさんは、自分の初恋を覚えていますか?どんなものでしたか?生まれて初めての恋は、誰にとっても印象深いものですよね。甘酸っぱかったり、とてもうきうきするものだったり、その反対に悲しかったり。そんな思い出のある初恋が、実は本物じゃなかったとしたら、一体どうするでしょうか。

作中で由紀は、環菜の語る「初恋」が実は本物の恋では無い事を見破ります。そしてその辛い“偽物の初恋”の記憶をさらけ出させることで、環菜の真意を知る事に成功するのです。

愛情のように見せかけて実は身体が目当てだったり、特に若いころには、恋愛と見せかけた危ないものが周りにたくさんある。恋愛とは似て非なるものを混同している女性って、実はすごく多いんじゃないか」と原作者の島本理生さんは語っています。「“あのときの恋愛は実は恋愛ではなかったのかもしれない” “本当は悲しい気持ちを押し殺していたのかもしれない”。読んだ方に少しでもそうした気づきがあればと思い、この小説に“初恋”という意味のタイトルをつけました」

初恋をする時、もしかしたら人はまだ、恋って一体何なのか、愛って一体何のかすらわからないまま恋愛をしているのかもしれません。時が経ち思い出して、自分が初恋だと思っていたものが実は恋愛と呼べるものではなかったと気付いた時、人は何を感じるのでしょうか。環菜のように傷つくことを恐れて、本当の自分の気持ちを押し殺してしまう事もあるのではないでしょうか。

例えそれが幸せな恋愛と言えるものでなかったとしても、人それぞれの”ファーストラヴ”には、「誰かに傷を癒して欲しい」と愛を求めた事実が隠されているはずです。そして月日が経った後に、自分の”ファーストラヴ”が本物の恋や愛では無かったという真実と向き合えた時、人は初めて本当の愛に向かって歩き始める事ができるのでしょう。そんなメッセージが込められているように感じました。

まとめ

「ファーストラヴ」は、原作者・島本理生さんが送り出す、女性による女性の為のヒーリング作品とも言えます。タイトル「ファーストラヴ」には”初恋“や”初めて知る本当の愛“の意味があり、恋愛に傷ついた人や、恋愛だけでは解決できない傷を抱える全ての人に送る、癒しの物語です。誰もが傷ついた経験を胸に抱えて生きているはず。その傷をさらけ出すことが出来れば、その傷に共鳴する誰かが現れて、本当の自分への新しい人生が始まるという事をこの作品は教えてくれます。

 

以上、ファーストラヴ|映画のタイトルの意味は?原作者島本理生の意図についてもについてご紹介しました!

最後までお読みいただきありがとうございました。

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