2020年11月6日より公開されているこの映画は、原作の題名も『おらおらでひとりいぐも』、芥川賞作家・若竹千佐子さんの作品です。
監督は沖田修一さん、主演は田中裕子さん。第33回東京国際映画祭では特別招待作品としてワールドプレミア上映もされています。
主人公は夫に先立たれ、娘とも疎遠である74歳の老女です。孤独な彼女は脳内で他者と会話できるようになっていきます。ひとりの女性が孤独ながらも、ユーモアで人間賛歌なストーリー展開となっています。
映画『おらおらでひとりいぐも』は、原作は圧倒的にシニア世代の支持を得ていますが、他の世代も楽しめる作品なのでしょうか?
今回は観た人たちの感想から、映画の面白い理由とつまらない理由について紹介します。
- 面白い理由
- つまらない理由
- 評価まとめ
面白い理由は?
映画化を楽しみにしていた!
#果物765#おらおらでひとりいぐも
サトコさんおはようごばいます
映画紹介楽しみです
パートナーのお勧めで、最近読み始めました。
主人公の桃子さんを、田中裕子さんに重ねて読んでいると、尚更、読書の世界に浸っていきます。 pic.twitter.com/SpODWdSIiY— ショーゾー丸 (@syozo1963) November 14, 2020
原作小説を読んで映画化を楽しみにしていた方。
原作の作家である若竹千佐子さんは、55歳の時にご主人を亡くしました。それまで長く専業主婦として生きていた彼女は消沈してしまいます。しかし長男からのすすめをきっかけに、早稲田大学のエクステンションセンターで小説講座に通い始め、「おらおらでひとりいぐも」を執筆しました。この作品は2017年に第54回文藝賞を史上最年長で受賞し、63歳で作家デビューしています。翌年の2018年には第158回芥川賞を受賞しています。
この小説は岩竹さんの実体験をもとに描かれています。岩竹さんは「中年以降の女性は妻とか母といった役割を少しずつ脱ぎ捨てていって、自由にものを考えて生きられるようになる。老いを生きることに価値を見出す物語を描きたかった」と、この小説への想いを語っています。
タイトルの『おらおらでひとりいぐも』は東北弁です。「私は私らしく一人で生きていく」という意味で、タイトルからも岩竹さんの想いが伝わりますね。
女性は年齢によっては、自分の人生よりも家族のために費やす時間が多くなりがちです。その制約がなくなった老いと呼ばれる時期こそ、自分らしく生きられるのかもしれません。
脳内ファンタジー劇場で面白い
『おらおらでひとりいぐも』鑑賞
原作はイマイチ波長が合わず…
映画の方は、大・大・大好き♡75歳の桃子さん
彼女の脳内ファンタジー劇場は、私をいろんな道に連れて行ってくれた
今まで来た道
現在通過中の道
そして、これから通る道特にばっちや(祖母)とのシーンは刺さり過ぎて涙
→ pic.twitter.com/QX3Umhctyz— yokito (@yogini_yokito) November 12, 2020
原作小説よりも映画の方が面白く感じたという声。
主人公の桃子(田中裕子)は夫に先立たれ、ひとり娘も疎遠のため孤独な老女です。毎日同じことを繰り返す生活。唯一の趣味は、近所の図書館で本を借りて地球の誕生から46億年の歴史についてノートを作ることです。
この映画は主人公の桃子の脳内が映画化されているシーンが多く、冒頭のシーンも46億年前の世界が映し出されます。桃子の脳内妄想が激しくなると、自分の分身である3人組、寂しさ1(濱田岳さん)・寂しさ2(青木崇高さん)・寂しさ3(宮藤官九郎さん)が登場します。
脳内のシーンは小説よりも映像化の方がリアルでわかりやすく感じることでしょう。また寂しさ3人組は桃子の心のはずですが、それぞれ個性がありユーモアたっぷりのシーンで、その様子の桃子は、孤独な老人には見えなくなっています。
クスっと笑えてホロリと泣ける
『おらおらでひとりいぐも』観賞
沖田修一監督の映画はいつも食べ物が美味しそう…そして、シュールな部分やクスッと笑える部分、ホロリと泣いてしまう部分全部がとてもいい…癒される… pic.twitter.com/9EsM7tWnFV— ぽめたに@IBD (@pometanishota) November 14, 2020
物語は昔の記憶へと展開していきます。桃子は親に決められた結婚が嫌で逃げ出し、都会に出ていきます。けれど同郷の男性と結婚します。若かりし頃の桃子役には蒼井優さん、桃子の夫役には東出昌大さん。
二人のシーンは高評価されており、桃子の脳内の仲睦まじい幸せだった日々の記憶は、温かくホロリと泣けるシーンです。
また、「住宅街の普通の風景が良かった」「町外れのちょっとした森の光が差し込んだシーンが素敵だった」などカメラワークも印象の残るといった声もありました。
懐かしい雰囲気が漂う風景は感動的で、この映画の見所のひとつでしょう。
つまらない理由は?
「寂しさばかりが強調されていた」
桃子は知人から大正琴や太極拳などに誘われるのですが、人付き合いは面倒だと考えてしまう性格です。そのためこの映画は、引きこもりな、孤独な老人の生き方が描かれています。
その姿は悲しく寂しさが漂ってきます。今の時代はそれでも、SNSなどで人とコミュニケーションをとることもできますし、アクティブにシニア時代を謳歌している人たちがたくさんいます。
そう考えると、桃子は現代の老人像とは少しかけ離れている感じもあり、感情移入しづらい部分はあります。
「のんびりとしたテンポなので油断すると眠くなる」
この映画は桃子の孤独な日々を映し出しているため、無音で理解しにくい間があったり、物語も淡々としているシーンも多く、上映時間も長めです。油断すると眠気との戦いになってしまったという声もありました。
どこまで桃子の孤独を感じ取れるかがこの映画を楽しめるかのポイントになるようです。小説を読んでから映画を観れば、より桃子の孤独に理解を深められるかもしれません。
まとめ
主人公の桃子は孤独ながらも自分の世界を見つけて生きていきます。
上映時間がやや長めで、桃子の孤独な日々を映し出しているため、淡々とした物語にみえてしまうといった感想もあります。
しかし人は皆同じように老いていきます。そう考えると自分に置き換えて鑑賞できる映画です。自分の中の寂しさ3人組も探してみたくなりますし、映画のそのシーンは笑えること間違いありません。
この映画を観終わった後、親の気持ちに寄り添えたり、温かい気持ちになれる作品です。ぜひ劇場でクスっと笑ってホロリと泣いて映画を楽しんでください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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