Fukushima 50|あらすじと感想。批判と海外の反応が話題に?

 

Fukushima 50|あらすじ

東日本大震災から8年後の2019年に公開された”Fukushima 50″。

忘れもしないあの日、日本は大きな揺れと津波に襲われた。

それにより、東京電力福島第一原子力発電所は電源喪失、建屋の水素爆発と想定外の事態に見舞われた。

 

この映画は、当時の吉田所長などへの取材を基に書かれた門田隆将の原作をもとに、事態の収拾のために闘った約50名の職員たちについて描いた真実の物語である。

監督は『沈まぬ太陽』『空母いぶき』などを手がけた若松節朗。出演は佐藤浩市、渡辺謙など。

 

2011年3月11日午後2時46分。東京電力福島第一原子力発電所は大きな揺れにより原子炉建屋を管理する中央制御室では停電するものの非常用電源を用い様々な確認作業が行われていた。

そんな中、津波警報にも「ここは大丈夫」と思っていた作業員たちと発電所を巨大な津波が襲う。

それによって電源は失われ、原子炉を冷やすことができなくなってしまった。

Station Black Outが宣言され、所長の吉田はただちに本社に連絡し指示を仰ぐも、本社の踏ん切りがつかない態度や緩慢な対応に吉田はついに怒りをあらわにしていた。

原子炉が爆発し、東日本が壊滅状態になってしまうのを防ぐためには、ベントという原子炉内の蒸気を抜き圧力を下げる必要があった。

しかしそれは放射性物質を外に放出することを意味するため半径10km以内の住民を避難させた上で行うという苦渋の決断を迫られていたのだった。

作戦は決行にうつされたが、あまりにも困難で危険なその作業に仲間たちの結束力は弱まりを見せた。その後、1号機、3号機が水素爆発を起こし事態は最悪の状況に。

吉田は「避難命令」を出し、幹部や、技術的に必要な年長の所員を残し、全員を避難させ、緊対には50名ほどが残った。

のちに海外メディアはこの50名を”Fukushima 50″と呼んだのだった。

批判の声とは?

”知られざる真実のストーリー”とうたっていることもあり、単に省略とは言い切れない事実の美化について、大きく賛否両論が巻き起こっている。

例えば映画内では「総理が現地へ行くことになったのでベントが遅れ、被害が拡大した」したというストーリーに仕立てている。

いまもこのストーリーを信じている人は多い。

しかし実際は手動の作業の準備に時間がかかっていたにもかかわらず、その報告を怠っていたのだ。

 

さらに、1号機が水素爆発するシーンは首相は官邸の危機管理センターにいて、そのモニターでリアルタイムで知ったかのように描かれている。

しかし、実際はテレビをつけると日本テレビが、第一原発が爆発しているのを映していた。

それは実際に爆発してから1時間が経過し、その間、東電からは何の報告もなく、首相は、一般の国民と同時刻に、テレビで知ったのである。

映画評論家の川口敦子は

「戦後日本への道をなぞり、迷いなく美化するような展開に呆然とした」

佐野亨は

「この作品は検証や哀悼や連帯ではなく、動揺や怒りや対立を呼びおこす」

さらに福間健二は

「自然を甘く見ていたというだけの結論。何を隠蔽したいのか。若松監督、承知の上の職人仕事か」

と揃って厳しいコメントをつけた

事実を多くの人々に伝えるための作品なのに、政治的な「事実の加工」が目立ち、残念でならない、との声が相次いだ。

海外の反応は?

筆者は、題名をFukushima 50 とローマ字で記していることから、制作者側は日本のみならず世界に向けて発信したいメッセージだったのではないかと考察した。

さらに”世界のワタナベ”の愛称を持つ渡辺謙の出演は海外の注目を一気に集めるきっかけとなったことは間違いないだろう。

しかし海外でも反応は毀誉褒貶であり、”これぞ日本のヒーロー、予告映像もハリウッド映画みたいだ!” と絶賛の声もあれば、”利益を第一に考えて作られた映画。”とネガティヴな意見も見受けられた。

感想・考察

ほかの復興もの映画に比べて、事故からわずか8年での公開は極めて短い期間であり、見る人によっては「まるで事故が収束したかのような印象を与えるのではないか」との批判も聞かれるのだ。

さらに、「2020年7月、復興のための五輪が、日本で開催される。聖火は、福島からスタートする」というテロップが出るのも”過去の事”のように扱っている、と感じさせやすいのかもしれない。

しかし今回、注目の的である渡辺謙は、

「ポジティブすぎる言い方に聞こえてしまうかもしれません。でも、僕はこのタイミングで改めてあの時、福島で何が起きていたのかを伝え、賛否を巻き起こすことに意味がある、そう考えました」とコメントし、

「僕たちは原発そのものの是非を問うているわけではない」と前置きした上で、「この事故によって得たはずの教訓がなかったことになるくらいならば、賛否を巻き起こした方が良いと思うんです」

とその理由も口にした。

制作者側の、批判も受け止めた上で風化させるくらいならどんな形でも人々の記憶に残したい、という覚悟もうかがえる。

まとめ

米国大使館関係者の協力を得て前例のないアメリカ国防総省への撮影申請を行い、「トモダチ(Operation Tomodachi)」を再現したシーンでは在日米軍横田基地にて撮影が行われるなどリアリティを追求した作品だ。

在日米軍が多数エキストラとして撮影に協力しているが、これは日本の映画史上初の試みである。

事実の加工も指摘されてはいるが、原発への海水注入をどうするかのやりとりや、ベントと住民の避難の関係なども、映像では伝えきれない部分をテロップでフォローするなどして実際の現場の裏側をリアルに表そうとしている努力もうかがうことができる。

批判も含めて、世界中にもう一度、原子力発電はどうあるべきか、という問題提起をするきっかけになる作品だろう。

 

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