1.白い暴動 – あらすじ
1970年代後半、経済破綻状態にあったイギリス。市民の不安と不満の矛先は、第二次世界大戦後に急増した移民に向けられ、過激な排外主義運動に発展していきます。
街には暴力が溢れかえり、特に排外主義運動の唱える「白人至上主義」によって、黒人が襲われました。
そんなナチスを彷彿とさせるような残虐な現実に、真っ向から異を唱えたのが、芸術家として活動していたレッド・ソーンダズを中心にしたわずか数人の若者たちで発足された “ロック・アゲインスト・レイシズム”略称RARでした。若者を中心に一代ブームを引き起こした彼らは、特にちょうど台頭してきたザ・クラッシュをはじめとするパンクや、イギリスに渡ってきた黒人たちのレゲエと呼応していき、運動を徐々に大きくしていきます。
1978年4月30日、RARが決行した約10万人による大規模なデモ行進と終着地での音楽フェスは、市民が一つになった瞬間であり、音楽の持つ影響力という力を感じるものに。
観る者の心を揺さぶる映像と音楽に、2時間があっという間に感じるドキュメンタリー映画でした。
2.白い暴動 – ザ・クラッシュ、とはどんなバンド?
時代を象徴するパンク・ロックのシンボルであり、幅広いファンを持つ最も成功したパンク・ロック・バンドのひとつである『ザ・クラッシュ』
1977の1stアルバム「白い暴動」でデビューした後、スカやレゲエ、ダブ、カリプソ、ヒップホップ、ニューウェイヴなど様々な要素を取り入れて音楽性を拡げ、独自の個性的な音楽性を確立しました。
同じくパンク・ロックのシンボルである「セックス・ピストルズ」と比べても、幅広い音楽性を取り入れた『ザ・クラッシュ』のファンはとにかく幅広い!!パンク・ロックファンだけでなく、多くのロック好きがそれぞれにお気に入りのアルバムを聴きます。
1stアルバム「白い暴動」の『White Riot』
ザ・クラッシュの原点であるこの最高傑作。一度は聴いてみてください!
本作を観てから聴けば、よりぐっとくるものがあるのではないでしょうか。
3.白い暴動 – 感想・評価・考察
排外主義者達のひどい人種差別と暴力は、現代とはかけ離れた世界に思えます。
が、恐慌の不安に耐えられない人々がヘイト政党に煽られ、ダークサイドに落ちていく姿を見て、これからひどい不況に陥る可能性の高い日本で、同じような状況にならないとは断言できない。なぜか感じる既視感に恐怖を感じました。
むしろ、移民排斥の声が各地で大きくなっている今だからこそ、観るべき映画だと思います!
そんな中で、音楽による団結によって国を変えることができると証明した本作は、音楽による抵抗、革命がテーマですが、社会派ドキュメンタリーになっています。「一般市民でも世界を変えられる。」平和のために、それぞれができることをできる限り尽くすことで、小さな波紋も大きな波になるというメッセージを強く感じました。
貴重なインタビュー映像が満載で、当時の記事をコラージュしたような演出が面白く、情報量の多い作品です。RARについて、ほんとうにリアルに描かれています。観終わった後に、より掘り下げて、その時のイギリス情勢などについて調べてみたくなると思います!
4.白い暴動 – まとめ
あまり詳しく知ることのなかった70年代のイギリスの不況事情。詳しくリアルな当時の状況を「市民視点」で知ることのできる貴重な経験だと思います。
そして、ラストのクラッシュの「白い暴動」!!しびれるようなかっこよさです!クラッシュのパワーもさることながら、詰め寄る観客の発するパワーに胸が熱くなります。
白い暴動
俺は暴動を起こしたい
白い暴動
俺たちの暴動を
The Clash “White Riot”
ぜひ一度観てほしい作品です。
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