セリーヌ・シアマ監督の、カンヌ国際映画祭で女性監督初のクィア・パルム賞二冠を獲得した作品、映画「燃ゆる女の肖像」
多くの映画人から称賛を得た今作は女性同士の恋愛を美しく描き、ジェンダーギャップ問題にも触れた作品になっています。
監督:セリーヌ・シアマ
脚本:セリーヌ・シアマ
音楽:ジャン=バティスト・デ・ラウビエ、アーサー・シモニーニ
撮影:クレア・マトン
編集:ジュリアン・ラチェリー
配給:仏・ピラマイド・フィルムズ、日・ギャガ
今回は、燃ゆる女の肖像のあらすじ、音楽について紹介していきます。
- 「燃ゆる女の肖像」のあらすじ
- 「燃ゆる女の肖像」の音楽
- 「燃ゆる女の肖像」の見どころ
予告動画
登場人物(キャスト)一覧
マリアンヌ(ノエミ・メルラン)
画家。伯爵夫人に娘エロイーズの肖像画を描くよう依頼される。
エロイーズ( アデル・エネル)
ブルターニュの孤島に住む娘。
ソフィー(ルアナ・バイラミ)
使用人。
伯爵夫人(ヴァレリア・ゴリノ)
エロイーズの母親。
あらすじは?
あらすじ1
18世紀末、フランス。女性画家のマリアンヌは絵画を教えていました。生徒の1人に彼女の描いた絵について聞かれます。マリアンヌはその絵を「燃ゆる女の肖像」と呼びました。
18世紀、フランス・ブルターニュの孤島。
画家のマリアンヌは、伯爵夫人からの依頼を受けて、島に降り立ちます。
娘エロイーズの見合いの為の肖像画を描くという依頼でした。結婚を拒むエロイーズは肖像画を描かせないだろうと、伯爵夫人は散歩相手として彼女と接し、隠れて肖像画を制作するように言います。
夫人からは、エロイーズは自殺した姉の代わりに結婚するため、修道院から戻って来たとも知らされました。
マリアンヌは毎日エロイーズと散歩し、夜に肖像画の制作を進めます。
絵は完成したものの、罪悪感からマリアンヌは自分の正体と依頼内容を打ち明けます。
自分が描かれた絵を見たエロイーズは、その絵を批判します。批判を受けて憤ったマリアンヌは絵を破棄し、夫人は失望します。
しかし、エロイーズは肖像画の為にモデルになることを承諾、伯爵夫人はその変化に驚きます。
あらすじ2
伯爵夫人は自分がイタリアに出かけている間に絵を完成させるように伝え、家を空けます。
屋敷に残ったマリアンヌとエロイーズ、使用人のソフィーはオルフェウスとエウリュディケの物語を読み、議論を交わします。親交を深める中で、ソフィーが望まぬ妊娠をしており、堕胎を望んでいることを知ります。
2人はソフィーの堕胎を手伝うため、女性が集まる焚火の会に参加します。
そこでエロイーズのドレスのすそに火がついてしまいます。その姿にマリアンヌは、エロイーズのウエディングドレス姿を見るのでした。
音楽、曲、サントラは?
この映画には2曲の音楽しか使用されていません。その2曲が登場するのもたった3シーンのみです。
1曲目はヴィヴァルディの協奏曲第2番ト短調RV315「夏」
マリアンヌが好きな曲だと言ってエロイーズに少し聞かせます。2人の心が近づく象徴的なシーンに使われたこの曲はラストシーンにオーケストラアレンジで流れます。
もう1曲は「La Jeune Fille en Feu」
監督が18世紀に似合う音楽を探していたところ、見つからずエレクトロニックミュージックのプロデューサー バラ・ワンを中心に作られました。
詞はシアマ監督がニーチェの詩を引用してラテン語で書きました。
監督は
脚本を書いている時から、音楽なしで作ることを考えていました。基本的には、当時を忠実に再現したかったからです。彼女たちの人生において、音楽は求めながらも遠い存在でしたし、その感覚を観客にも共有してほしかった
出典:映画『燃ゆる女の肖像』公式サイト
見どころは?
こだわりの美術
シアマ監督は、模倣画の作家ではなく、アーティストを探したそうです。
インスタグラムなどで女性画家に限定し、アーティストを探した監督が見つけたのは、エレーヌ・デルメールという画家でした。
油絵の古典的技法も学び、19世紀の技法にも精通している画家だそうです。
リアリティを持って制作の段階を撮影したかった監督は、エレーヌ・デルメールの制作風景を様々な段階を連続して撮影しました。
キャストの存在感
エロイーズを演じたアデル・エネルは監督のデビュー作「水の中のつぼみ」以来2度目のタッグとなります。
監督は
ここ数年でアデルが実証してきた才能を、この役柄に反映させていますが、彼女に私も知らない新境地を開拓してもらいたいという期待も込めました
出典:映画『燃ゆる女の肖像』公式サイト
と語ります。
また監督は、マリアンヌ役には強い存在感の女優が必要と考え、ノエミ・メルランを起用しました。
ノエミは毅然としていて、勇敢で情熱的な役者です。正確さと過度な部分を混じり合わせながら、マリアンヌという人物を作り上げてくれました。まるで、マリアンヌが実在の人物のように見えるのは、ノエミのおかげです。
出典:映画『燃ゆる女の肖像』公式サイト
と、監督はノエミの演技を称賛しました。
数々の称賛の声
Rotten Tomatoesでは平均評価10点中9点を記録し、多くの批評家から称賛の声が上がっています。
また、カンヌ国際映画祭脚本賞をはじめ、数々の賞にノミネート、受賞されています。
「マザー」や「私はロランス」など若手ながら多くのセンセーショナルな名作を生みだす映画監督グザヴィエ・ドランは「こんなにも繊細な作品は見たことがない」と称賛しています。
また女優のシャーリーズ・セロンは「この映画を本当に愛しています」とコメント、女優で映画監督のブリー・ラーソンは「50年後に残る映画は?」という質問に対して今作をあげるなど、多くの女性からも支持を得ています。
まとめ
ここまで「燃ゆる女の肖像」のあらすじや音楽情報についてまとめました。
女性たちの愛の物語を女性映画監督のセリーヌ・シアマの手によって繊細で美しく描かれ、他にはない作品になっています。
絵画のほかにも衣装やロケ地となった城や美術にも、美しさを欠くことなくこだわって作られています。
個人的な話だからこそ、現代にも通じるテーマがあり、ジェンダーギャップにも踏み込んだ社会的メッセージのこもった作品になっているのでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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