2019年に公開の映画「記憶にございません!」
監督・脚本は三谷幸喜さん、主演は中井貴一さん。ディーン・フジオカさんや石田ゆり子さんなど、キャスティングも豪華な顔ぶれです。
総理大臣の黒田啓介は傲慢不遜な性格。国会討論では暴言や失言などが度々あり、支持率も史上最低を記録するほどでした。演説の最中、傍聴側からの投石が頭を直撃したことで、黒田総理は記憶喪失になってしまいます。記憶喪失になっていることは内密にされました。職務を退くわけにはいかなかったからです。
しかし、それまでとは別人で実直な性格になった黒田啓介は総理大臣でいられるのでしょうか。また、黒田総理は途中から記憶を取り戻していて、その事実を隠しているのです。なぜなのでしょうか。
今回は、黒田総理の記憶が戻ったタイミング、なぜ記憶が戻ったことを隠していたのか?について考察していきます。
- 黒田総理の記憶が戻ったタイミング
- なぜ記憶が戻ったことを隠していたのか
- 黒田総理が料理人にした質問の意味とは?
総理に記憶が戻ったのはいつ?
記憶が戻るきっかけになったこと
自宅のキッチンで暗闇の中、なにやら物色する黒田総理。そこに誰かの気配を察した官邸で住込み料理人をしている寿賀さん(斉藤由貴)が…部外者が侵入していると勘違いてしまい、置いてあったフライパンで黒田総理の頭を叩きます。
頭を叩かれうずくまる黒田総理でしたが、このことがきっかけで、起き上がった黒田総理は過去の記憶を思い出しているようです。
記憶が戻ったと考察できる黒田総理の発言・行動
フライパンで頭を叩かれた後の黒田総理の発言・行動は大きく変わっています。
黒田総理は記憶がない時は「無理」「できません」という消極的な発言をしていました。しかし、フライパンで頭を叩かれた後の黒田総理の発言は前向きになり、問題にも解決案を探りながら行動していきます。さらに、以前の黒田総理なら口にしないような「私の責任だ」「僕が悪かった」という言葉も頭を叩かれて以降増えています。
投げられた石が頭に当たったことで記憶を失くし、フライパンで頭を叩かれたことで記憶を取り戻すという設定が面白い作品ですね。
記憶が戻ったことを隠していた理由は?
記憶が戻った黒田総理は、なぜ記憶が戻ったことを隠していたのでしょうか。理由について考察していきます。
小学生の自分を思い出したから
黒田総理は記憶喪失になったことで純粋な少年の頃の性格になりました。
小学生の頃の恩師・柳友一郎(山口崇)を思い出し、先生の授業を受け直し、政治の在り方について考え直します。“本当の政治家とは日本国民のために働く人のことだ”という思いを強めた黒田総理。自分の過ちをしっかりと反省し、謝罪できる総理へと態度を改めていきます。しかし、理想の政治とは大きな隔たりがあり、このままでは現状を変えられないと感じます。
しがらみだらけの政治を変えたいから
官房長官・鶴丸大悟(草刈正雄)は裏のドンで、政治の主導権は彼が握っているようなものでした。態度が変わった黒田総理を記憶喪失では…と気遣うふりをして退陣を促します。
黒田総理は否定しますが、怪しむ官房長官は大臣の顔の名前当てクイズを出題します。初めは答えにつまりさらに怪しむ官房長官に、黒田総理は急にすらすらとクイズに答え始めます。クイズに正解する度に二人とその取り巻きの顔つきが変わっていくシーンが印象的でした。
黒田総理は、腹黒い官房長官でもこれまで自分を支えてくれた恩義はあります。しかし、このままでは政治は変えられないと覚悟を決め、官房長官と対立する道を選んだのだと考察できます。
誠実な政治を行うと決意したから
黒田総理は国民のために誠実な政治を行うことを決意します。
記憶を失う前に計画していたK2プランは利権まみれでした。その内容は2つ目の国会議事堂でスーパー銭湯付きを建てるというもの。このプランは中止を決定。また、アメリカの大統領・スーザン(木村佳乃)が来日した際も政治交渉には毅然とした態度で自分の意見を述べます。
記憶が戻ったことを隠した方が自分の意思を貫けると考えたのでしょう。
料理人に質問した意味は?
官邸料理人の寿賀さんにフライパンで頭を叩かれうずくまる黒田総理。しかし、起き上がった後は料理人との話の流れで不自然な質問を投げかけます。「政治の三大原則って知ってる?」
なぜ、黒田総理はこのような質問を投げかけたのでしょう。記憶を取り戻した黒田総理は、”政治の三大原則も理解しないまま総理大臣をしていたことを思い出したから”だと考察できます。
黒田総理はその後、本来の政治は国民のためでなければならないと考え行動していきます。
黒田総理が料理人にした質問には、これまでの政治家としての記憶を取り戻したという重要な意味がありました。
まとめ
映画「記憶にございません!」の黒田総理は”官邸料理人にフライパンで頭を叩かれたことがきっかけで記憶が戻った”と考察できます。そして、黒田総理が官邸料理人にした「政治の三大原則って知ってる?」という質問の意味には、”政治の三大原則も理解しないまま総理大臣をしていたことを思い出したから”だと考えられます。
子供の頃に誰でも考えたことがある「もし、自分が総理になったら…」。三谷監督は「僕はさほど私利私欲もないから素敵な政治が出来るんじゃないかな…」という発想が兼ねてからあったそうです。しかし、日本では一般の人が総理大臣になるのは現実的ではないと考え、国民に嫌われている総理が記憶喪失になる…といった発想が浮かんだと語っています。
この映画は三谷監督らしい笑えて心がほっこりする作品です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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