本作は、フェルディナント・フォン・シーラッハの同名小説が原作であり、2019年上半期のドイツ映画No.1ヒット作となっています。
彼はドイツで刑事事件弁護士として活躍しているが、2009年に自身の事務所の事件をベースにした「犯罪」を刊行し、45万部を超えるベストセラーとなりました。
日本でいう芥川賞にあたるクライスト賞など複数の文学賞を受賞し、他にも社会派ミステリーを執筆し、作家としても敏腕を奮っています。
初の長編作品「コリーニ事件」で“法律の落とし穴”が明かされたことにより、法務省が調査委員会を立ち上げるほど国家を揺るがし、50万部のベストセラーになりました。
その圧巻の話題作が日本へ上陸!
6月12日公開を期待して、内容を見ていきましょう。
1.映画『コリーニ事件』あらすじ
カスパー・ライネンは、ある殺人事件の国選弁護士に任命された新人弁護士。
その殺人事件の被害者は、少年時代の恩人であり親友の祖父である大物実業家ハンス・メイヤーであることを知らずに、初の被告人弁護を引き受けた。
引き受けてしまったからには被告人のファブリッツィオ・コリーニを弁護しなくてはならない。
彼はなぜメイヤーを殺したのか・・・事件について何も言わず黙秘をするばかりだった。
このままコリーニから情報を聞き出せなければ彼は殺人罪で無期懲役になるだけなので、どうにかしようとライネンは独自に調べ始めるのであった。
捜査を進めていくと、コリーニの過去やドイツが隠したがった“不都合な真実”と向き合うことになり・・・
2.映画『コリーニ事件』感想・評価
原作の小説は、淡々とした文章が特徴的です。(翻訳者の訳し方もあるのでしょうけど)
冒頭でコリーニがメイヤーを射殺するシーンが描かれていますが、コリーニの行動が描写されているだけなのに憎しみが伝わる言葉遣いで、ストーリーに引き込まれてしまいました。
淡々としつつも内容が濃く、長編小説といっても190ページほどしかないので、ハマれば一気に読み終えてしまえる作品です。
犯罪には理由があり、今回の殺人事件もそれ相応の理由がありました。
第二次世界大戦での因縁が起こした事件なので、どんな理由であれ殺人はダメだと思いながらも、コリーニの肩を持ってしまう複雑な気持ちになりました。
そしてラストはその気持ちがどこにも行けず、もやもやが残ってしまう結末でした。
それはそれでいいのですが、だったらもっと早いうちに決断できたのでは?と思うところもあり、小説としてはオチに少し不満・・・だけど全体的に戦争の闇を浮き彫りにする深みのある作品だと思います。
3.映画『コリーニ事件』キャストは誰?
主演のライネンを演じるのは、エリアス・ムバレクという、エキゾチックでセクシーなルックスでファンを夢中にさせるドイツで人気No.1の俳優です。
出演作はドイツでヒット連発し、コメディーからシリアスな役まで幅広く演じ、オファーが絶えない実力者。
彼はシーラッハの大ファンということで本作の出演を決めたのですが、彼が主演だと聞いてマルコ・クロイツパイントナーは監督のオファーを受けたそうです。
刑事訴訟法の暗唱や裁判の傍聴、弁護士へインタビューなど、彼の熱心な役作りについても評価しており、「ドイツの監督なら一度は組みたいと誰もが思う」と話していたようです。
ムバレクはハリウッドデビューもしており、今後の活躍に期待できそうです。
4.映画『コリーニ事件』コリーニ事件とは?
小説なので実際にコリーニ事件という事件はないのですが、法律の落とし穴であるドイツの“不都合な真実”は本当にあった話です。
その“不都合な真実”はネタバレになるので、本作を純粋に楽しみたい方はこの先を読むことをオススメしません。
ドイツで第二次世界大戦とまで言葉が出ていて、予告にもナチスのハーケンクロイツが映っているので想像はつくでしょう。
ナチス軍の惨殺とそれを裁くこともせず無罪放免であった理不尽な法の力。
そのために苦しみ長い時を超えて決着をつけた遺族の罪とは・・・
コリーニ事件は小説の中の事件ではなく、実話の是非を世間に問うものでした。
ベストセラーとなり、国家が動くほどドイツで影響を与えた――それはまさに「コリーニ事件」と呼べるものなのかもしれません。
5.映画『コリーニ事件』まとめ
現役の弁護士が描く話なだけあって、重く、心に残る作品です。
それが実写で映像化され、さらに広く波紋を広げます。
日本でもあったかもしれない話でもあり、戦争について考える機会にもなり得ます。
昨今の緊急事態宣言の影響で試写会が中止になってしまいましたが、劇場で公開される日が楽しみな映画です。
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