コクリコ坂から|宮沢賢治原案『紺色のうねりが』の解説と考察、感想

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2011年に公開された、映画『コクリコ坂から』。

高校2年生の主人公、松崎海 愛称:メル(声:長澤まさみ)が、亡き父を思って毎朝旗を揚げるシーンが印象的な、宮崎吾郎さんが監督を務めたスタジオジブリの作品です。

男子文化部の部室棟、伝統のある『カルチェラタン』取り壊しへの反対運動が広まる港南学園高等学校が舞台。学生たちの強い意志や主人公メルと風間俊の淡い初恋、1960年代の時代背景が描かれています。

 

そんな『コクリコ坂から』の魅力をさらに引き立てていたのが、作中の挿入歌です。

ここでは、映画後半、来訪した徳丸理事長の前で生徒たちが合唱した、『紺色のうねりが』について考察していきます。

 

 

From Up On Poppy Hill – Official Trailer

 

宮沢賢治原案【紺色のうねりが】の解説と考察

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徳丸理事長の前で生徒たちが合唱した『紺色のうねりが』。

実はこの曲の原案は、岩手出身の日本を代表する詩人・童話作家である宮沢賢治さん。
『雨ニモマケズ…』の詩などで有名ですね。

そして作詞は宮崎駿さん、宮崎吾郎さん親子です。
1番を宮崎駿さん、2番を宮崎吾郎さんが作詞したそうです。

手嶌葵さんの澄んだ歌声から始まるこの曲が印象に残っている方も多いのではないでしょうか。

 

余談ですが、宮沢賢治さんの作品に影響を受けたジブリ作品は実は他にもあります。
『となりのトトロ』のモデルとなったのは宮沢賢治さんの「どんぐりと山猫」だそうです。
ジブリ作品初期から、宮沢賢治さんの作品を大切にしていたことがうかがえますね。

 

原案となった宮沢賢治の詩とは

『紺色のうねりが』の原案となったのは、宮沢賢治さんが1927年に、母校である盛岡中学校校友会雑誌への寄稿を求められて書いたとされる『生徒諸君に寄せる』という作品です。

※実はこの作品は完成しておらず、残っていた下書きに加筆修正された形で、朝日新聞の「朝日評論」が掲載したものだそうです。

 

生徒諸君に寄せる 一部抜粋

諸君よ 紺いろの地平線が膨らみ高まるときに
諸君はその中に没することを欲するか
じつに諸君は此の地平線に於ける
あらゆる形の山嶽でなければならぬ

(中略)

新しい時代のダーヴヰンよ
更に東洋風静観のキャレンヂャーに載って
銀河系空間の外にも至り
透明に深く正しい地史と 増訂された生物学をわれらに示せ
おほよそ統計に従はば  諸君のなかには少くとも千人の天才がなければならぬ
素質ある諸君はただにこれらを刻み出すべきである

注:ダーヴヰン・・・進化論を確立したダーウィンのこと。                 キャレンジャー・・・世界三大洋を調査したイギリスの「チャレンジャー号」のこと。

宮沢賢治『生徒諸君に寄せる』について思うこと

私は『紺いろの地平線が膨らみ高まるときに』このフレーズが特に印象的です。

学生に向けた言葉であることを考えると、これは例えば、生きていく先で待ち受ける、社会の荒波のような、漠然とした「これから生徒たちが立ち向かうであろう困難」を意味しているのではないかと思いました。

 

あらゆる形の山々として、その波にもまれても立ち上がり続けてほしい、という、激励の言葉に感じられました。皆さんはいかがでしょうか。

 

宮沢賢治原案【紺色のうねりが】についての感想

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さて、この『生徒諸君に寄せる』を原案として作曲された『紺色のうねりが』。
原案の詩と歌詞には違いがありますが、作曲にあたって込められた思いを考察していきます。
 

『紺色のうねりが』と『生徒諸君に寄せる』の対比

以下、『紺色のうねりが』の歌詞です。(1番歌詞の為、宮崎駿さん作詞部分です)

紺色のうねりが 飲みつくす日が来ても
水平線に 君はぼっするなかれ
我らは山岳の峰々となり
未来から吹く 風に頭をあげよ
紺色のうねりが 飲みつくす日がきても
水平線に 君はぼっするなかれ

 

『生徒諸君に寄せる』にある、「紺いろの地平線が膨らみ高まるとき」と対比されている言葉として、「紺色のうねりが 飲みつくす日」とあります。

歌詞だけを読みますと、全体的に大きな意味では原案と変わっていないように感じます。歌うのはカルチェラタン取り壊し反対運動などに励む生徒たち、学業に励む生徒たちですから、やはり「困難に立ち止まることがあっても、ぼっする=諦めること無かれ」という激励の意味は共通していると思います。

ただ、映画を鑑賞した後にこの歌詞を改めて読みますと、伝わってくるイメージが原案とはまた少し違ってくるように感じました。

 

歌詞から感じた『海』のイメージ

『コクリコ坂から』には『海』という1つのテーマを感じられます。

舞台が横浜であることや主人公メルの名前、そしてメルと俊の生い立ちには、船員仲間であったお互いの父親たちが関係しています。歌詞で伝えられる「紺色のうねり」には、そのまま海の波も表しているのではないか・・・と思ったのです。

船乗りだった父を思って旗を揚げるメルの姿や、俊の父が海の事故で亡くなっていた事実が連想されるように思います。

 

もう一つが、津波です。

作品が公開されたのは2011年7月。2011年の東日本大震災の後であったこと、原案の宮沢賢治さんも岩手出身(岩手県も津波により多大な被害を受けています。)ということから、やはり津波が連想されました。筆者が東北県民だからかもしれませんが・・・同じ方も、もしかしたらいらっしゃったのではないでしょうか。

勿論作品の制作は震災以前に終わっていたはずでしょうし、この歌詞に関して特に明言もされていませんので偶然かもしれません。

ですが、

 

「水平線に 君はぼっするなかれ」

 

まるで観客側への、被災地への応援のような、温かい言葉にも感じられないでしょうか。

宮沢賢治原案『紺色のうねりが』の解説と考察、感想のまとめ

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ここまで、『コクリコ坂から』挿入歌『紺色のうねりが』について、宮沢賢治さんの原案『生徒諸君に寄せる』の解説を踏まえて考察してきました。

 

主人公たちが歌うシーンから伝わるイメージは、観客によってさまざまだったかもしれません。ですが、宮崎駿さん、宮崎吾郎さんの作品に込めた思いを感じられるような、作品を彩る魅力のある楽曲であることは間違いありませんね。

歌詞の意味を、あなたはどのように受け止められましたでしょうか。

 

以上、コクリコ坂から|宮沢賢治原案『紺色のうねりが』の解説と考察、感想についてご紹介しました!

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

 

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