2010年、スタジオジブリ制作のアニメーション映画です。監督はこれが初監督作品となる北村宏昌さんです。
人間には見られてはいけない。それが床下の小人たちの掟だった。
古い屋敷の床下に、もうすぐ14歳になる小人の少女アリエッティが父ポッド、母ホミリ―と家族3人で住んでいました。
彼らは、自分たちの暮らしに必要な物だけを床上に出て借りて、ひっそりと暮らしています。そんな、小人のお話です。
原作の『床下の小人たち』のアニメーション化は、約40年前に宮崎駿さんと高畑勲さんが企画していました。しかし、その時は叶わず、2008年に改めて宮崎によって企画され、作品として現実となりました。
監督には、宮崎さんが若手の起用を希望していたため、プロデューサーの鈴木敏夫さんの提案で米村さんが起用されました。
「借りぐらしのアリエッティ」に原作があったなんてーーーー!
ということで、ちょっと調べてみました。
借りぐらしのアリエッティ|原作小説『床下の小人たち』解説
『床下の小人たち』について
「借りぐらしのアリエッティ」は、メアリー・ノートン著書の『床下の小人たち』(林容吉訳 岩波少年文庫刊 1969年4月24日刊行)を原作として翻案・脚色された作品です(第5作の翻訳は猪熊洋子)。小学生高学年を対象に翻訳されています。
『床下の小人たち』(原作:The Borrowers)は1952年に出版された、メアリー・ノートンのファンタジ―小説で、イギリスの図書館協会が主催する児童文学賞であるカーネギー賞を受賞しています。
人間から物をかりることで、ひっそりと暮らしていた小人の冒険を描く物語です。1961年の第4作で完結を思われていましたが、その21年後に第5巻が発表されました。
出版順に、
★野に出た小人たち(1955)
★川をくだる小人たち(1959)
★空をとぶ小人たち(1961)
★小人たちの新しい家(1982)
があります。
映画化された作品には、
★ザ・ボロウワーズ(1992~1993年イギリス)
★ボロワーズ/床下の小さな住人たち(1997年アメリカ=イギリス)
★借りぐらしのアリエッティ(2010年日本)
★ザ・ボロウワーズ(2011年イギリス)
があります。
メアリー・ノートンについて
メアリー・ノートンはイギリスの児童文学作家です。
『床下の小人たち』を含めた『小人の冒険シリーズ』が代表作です。
1903年12月10日、ロンドンで物理学者の娘として生まれます(1992年8月29日没)。
21歳の時に劇団の女優になります。24歳の時、ポルトガルの裕福なイギリス紳士、ローバート・ノートンと結婚をし、それを機に女優業を引退します。
1929年の世界を襲った大恐慌で夫の会社が倒産し、彼女は4人の子供とともに、ポルトガルからロンドン、そしてアメリカと流浪の人生を送ります。
1943年女優業を再開します。そして、ドイツ軍の爆撃の閃光で一度視力を失いますが、手術により視力を取り戻します。
1945年の第二次世界大戦終戦後もイギリスの各地を転々とし、困難な生活を送りながら子供のための物語を書きました。
『床下の小人たち』は、当時、魔法をつかうファンタジーが人気だった中、全く魔法を持たない小人が登場し、サバイバルをするという新しい展開の物語でした。
この物語は、メアリー・ノートンの人生と重ねて、何があっても生きていくという、彼女の生きることへの執着を感じる自伝でもあると思います。
借りぐらしのアリエッティ|原作小説との違いを比較
「借りぐらしのアリエッティ」は『小人の冒険シリーズ』の1~3作を抜粋して凝縮した映画です。
原作小説とは違うところがいくつかあるので、見てみたいと思います。
舞台
原作では19~20世紀のイギリスの田舎を舞台にした話です。
「借りぐらしのアリエッティ」では日本が舞台です。
舞台をより身近な日本にすることによって、描写を自分たちの暮らしを改めて考えたり、小人たちをより自分たちの立場に寄せて描くといった意図があったそうです。
翔について
原作では、8歳の少年でリウマチの病気療養ということです。インドにいる母親の所に帰る前に、おばさんのところで少し療養している設定で、手術はしません。
「借りぐらしのアリエッティ」では心臓の病気があって、手術が必要な影のある12歳の少年「翔」となっています。
「借りぐらしのアリエッティ」では、翔のモデルは、初めから翔の声を担当した神木隆之介と想定していたそうです。
外出禁止
原作ではお母さんの手伝いだけで外へは出られません。
アリエッティは外に出ることを熱望しています。
また、原作ではアリエッティの父は、アリエッティが借りをすることをとても毛嫌いしています。
「借りぐらしのアリエッティ」では、アリエッティは床上は禁止ですが、外へは出れます。
冒頭の語り
原作ではメイおばさんが弟(少年)から聞いた話を、自分自身がやっている編み物教室に通っているケイトに語っています。
「借りぐらしのアリエッティ」では、翔が語っています。
引っ越し
原作では、引っ越ししたことに泣きますが、悲しくてではなく、外に出れるうれし泣きなのです。
「借りぐらしのアリエッティ」では、アリエッティは引っ越しする事を悲しみ、自分のせいで引っ越しすることになったと謝罪をします。
スピラー
原作ではスピラーとは、引っ越しをするために野原に出てから出会います。そして、スピラーの助けで森に行き、いとこに会います。
「借りぐらしのアリエッティ」では、人間に見られてしまったためこの家には住めないと、父のポッドが新しい家を探すために出かけましたが、足をくじいたためスピラーに肩を借りて帰ってきます。
また、いとことは会うシーンはなく、川下りをしてエンディングです。
借りぐらしのアリエッティ|原作小説を元に「その後」を考察
『小人の冒険シリーズ』のその後
『小人の冒険シリーズ』は、
野原に出てスピラーと友達になり、スピラーの助けで森番の小屋にたどりつき、いとこと会います。しかし、そこも安全な場所ではなく、アリエッティ家族とスピラーは下水管から川へ出て、やかんに乗って川を下ります。
模型の村「リトル・ファーラム」にたどりつきます。幸せに暮らしていたのもつかの間、見世物客目当てのプラターさんに誘拐されて、屋根裏部屋に閉じ込められてしまいます。
ゴム風船で気球を作り、やっとの思いで脱出します。
再び川をくだり、ようやくのどかな牧師館にたどり着きます。そこは、今度は安心して暮らせる場所になるのでしょうか。
で、ストーリーは終わります。
「借りぐらしのアリエッティ」のその後は?
川下りの後は?
アリエッティたちは、引っ越し先の屋根裏部屋でねずみに襲われて死んでしまう説や生き残る説など、いろんな推測があります。
しかし、川下りのエンディングで謎の小屋が登場してきます。おそらくそれは、小説でいう牧師館ではないかと思われます。
そこが、新しい家になって、幸せに暮らすことになるのでしょうか。
私はこの牧師館で安心して暮らすことを願います。
翔のその後は?
原作では、少年は戦死します。
翔の手術が失敗するとか、成功するとかの説があります。しかし、「借りぐらしのアリエッティ」の冒頭で翔が「あの夏の思い出」と語るので、手術は成功して、過去を回想していると思われます。
アリエッティはスピラーと結婚!?
アリエッティが翔と再会したり、話が展開していくことは難しいと思います。
アリエッティがスピラーと結婚するという説があります。原作でもアリエッティがスピラーと結婚することを宣言しているようなことろもあるようです。
「その後」はやはり、読者や映画を観た人の想像に任されるところがありますが、それも物語の楽しみの1つでしょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。
コメント
[…] 監督は…sabostudio.jp2020.08.14 借りぐらしのアリエッティ|原作小説『床下の小人たち』違いや結末は? … […]
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