2020年11月20日に公開の映画「ばるぼら」。
原作は、手塚治虫が手掛けた大問題作です。
問題作を監督したのが、手塚治虫の息子である手塚眞。
小説家・美倉洋介の前に現れたのはフーテン女のばるぼら。
美倉はばるぼらの魅力に惹かれるも、2人は悲運に巻き込まれます。
悲運に巻き込まれた美倉が、全身全霊をこめて書いた最後の小説タイトルは「ばるぼら」。
ばるぼらの正体は、ミューズ(女神)なのかそれとも魔女なのか?
また美倉最後の小説「ばるぼら」の内容についても考察してみました。
- 映画「ばるぼら」の登場人物・ばるぼらの正体
- 映画「ばるぼら」の登場人物・美倉と手塚治虫の関係
- 美倉が最後に書いた小説の内容
ばるぼらの正体とは?
ばるぼらの正体は、浮世離れした女性です。
同時に他の女性にはない、美しさも兼ね備えています。
映画では、彼女の正体を「ミューズ(女神)か魔女か」と推測。
二階堂ふみの何とも言えない雰囲気を見れば、納得です。
そこで、ばるぼらの正体について考察してみました。
ばるぼらの正体はミューズ
ミューズは、9人の女神様のことです。
ミューズの1人であるポリュムニアーは、作家に名声と名作をもたらしてくれる女神様。
父ゼウスと母ムネーモシューネの間に生まれた、娘です。
かつて作家達は作品を作るために、ミューズ達に祈りを捧げていたそうです。
そしてミューズの恩恵を授かった作家は、素晴らしい作品を残したといいます。
映画では、ムネーモシューネと名乗るばるぼらの母親が登場。
小説家の美倉はばるぼらと出会ってから、人気小説家へとカムバックを果たします。
となると、ばるぼらの正体はポリュムニアーかもしれません。
ばるぼらの正体は魔女
作中、ばるぼらの正体は「魔女」と示唆されていました。
では「魔女」とは、どういう人のことを指すのでしょうか?
原作では「魔女は秘密の儀式を執り行ってきた女性」と、しています。
科学技術が発達していなかった古代は、魔女が実権を握り人々を動かしていました。
美倉がばるぼらを「魔女」だと断言した理由は、彼女の変貌っぷりによるものでしょう。
新宿で出会った頃のばるぼらは、妖艶さの欠片もないただの少女でした。
美倉と深い仲になるにつれて、女としての魅力が湧き出て別人に早変わり。
彼女の変化を見て、「魔女」と形容したのでした。
ばるぼらの正体はオンナ
ばるぼらの正体は、オンナそのものです。
ばるぼらをミューズか魔女と見ていたのは、美倉でした。
美倉は今まで、魂がないマネキンに強い愛情を感じていた人物です。
マネキンは姿を変えることはなく、「性格」という概念は存在していません。
エキセントリックな行動はせず、姿形が変わることもない存在です。
マネキンこそが、美倉にとって全てでした。
そんな中で出会ったのが、ばるぼら。
ばるぼらの姿は、常に変化しています。
そしてオンナも常に変化し、可愛い容姿になることもあれば、妖艶な美女に変身することも珍しくありません。
中には、性格そのものを大きく変えるオンナも存在しています。
ばるぼらと名乗るオンナの行動は、美倉にとって理解しがたいものでした。
理解を超えた人物だったからこそ、美倉は「魔女かミューズ」と見ていたのかもしれません。
最後の小説を考察!
バルボラと離れて数年後、美倉はバルボラによく似た女性ドルメンと出会います。
よく似ているのは当たり前で、ドルメインこそが、ばるぼらだったのです。
しかし再会したものの、ばるぼらは美倉の目の前で命を落としてしまいました。
ばるぼらの遺体を前にして、美倉は最後の小説「ばるぼら」を執筆します。
小説「ばるぼら」の内容はどんなものか、考察してみました。
現代版「ホフマン物語」
「ホフマン物語」は、原作者である手塚治虫が強い影響を受けた作品として知られています。
「ホフマン物語」の主人公は、詩人のホフマン。
ホフマンは親友に、自身の失恋話を聞かせます。
失恋話を聞いていた親友の正体は、ミューズでした。
ミューズはホフマンに「失恋話を詩神に捧げよ」と告げ、話は終わりです。
美倉がホフマンだとすると、最後に書いた小説は詩神に捧げるつもりで書いたのでしょう。
美倉にとっての詩神こそが、ばるぼらだったのです。
小説に登場したのは作者本人
小説「ばるぼら」の登場人物には、ばるぼらと美倉本人が登場していたと考察します。
美倉と手塚治虫の人物像は、驚くほど合致しています。
かつては売れっ子で今は落ちぶれた作家である点は、手塚治虫と同じです。
後に、人気作家にカムバックを果たす点も共通しています。
美倉の歩んできた人生が手塚治虫と合致していたとすると、作風が似ていたとしても不思議ではありません。
手塚治虫は、漫画に自身のキャラクターを登場させていたことで有名です。
作品によっては主役級として登場し、物語を盛り上げたこともあります。
最後の最後に、自伝小説のような内容を書いていたのかもしれません。
小説のラストは「ファウスト」
小説「ばるぼら」の内容は、美倉本人が救われる話だったのかもしれません。
理由は手塚治虫最期の作品「ネオ・ファウスト」にあります。
「ネオ・ファウスト」は、ゲーテの「ファウスト」を現代風にアレンジした話です。
物語のラストは、絶望に追い込まれそうになった主人公を愛する女性が救うものです。
美倉にとって現代に生きることは、絶望そのもの。
絶望から救ってくれたのが、ばるぼらでした。
そしてばるぼらに捧げるつもりで、小説「ばるぼら」を書きあげたのかもしれません。
まとめ
漫画の神様・手塚治虫が生み出してきた漫画で、問題作と言われた「ばるぼら」。
彼女の正体は、女性そのままの姿でした。
女性は姿形を変え、時には性格を変えて人に接することがあります。
男にとっては理解しがたい「女性の本性」を描いた手塚治虫には、頭が下がる思いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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